この記事では、私が公務員になってから最も多く触れている(そして悩まされている)公用文である「及び」と「並びに」について書いていきます。
法令や通知にも頻繁に出てくるこの用語。
特に新入職員の皆さんは、こうした用語をきちんと理解することで、法令や通知の読み間違いがなくなりますので、是非この記事を読んでください。
「及び」と「並びに」の意味
さて、これらの用語の意味は、いずれも「~と~」つまり「and」(並列)です。
日常生活で使う分にはどっちを使ってもいいんですが、公用文としての使い方には明確なルールがあります。
こうした公用文のルールがなぜ必要かというと、国や全国の自治体で統一されていることで、法令や条例・規則、通知文等の読み誤りを防ぐためです。
「及び」と「並びに」の使い分け
それでは、具体的に「及び」と「並びに」はどう使い分けるのでしょうか。
2つのものを並列して言うとき、まずは「及び」を優先して使用します。
(例)鉛筆及び消しゴム
みたいな感じです。
「鉛筆並びに消しゴム」
のように、いきなり「並びに」を使ってはいけません。
それでは、並列するものが3つ以上になったときはどうでしょうか。
3つ以上のものを並列でいう場合
同じ階層のものが3つ以上ある場合
「、(読点)又は,(カンマ)」でくくり、一番最後に「及び」を使用します。
(「、」(読点)か「,」(カンマ)かは、自治体により異なります。)
(例)鉛筆、消しゴム及び定規
という感じです。
鉛筆及び消しゴム及び定規 とは言いません。
しかし、これは同じ階層のものが3つ以上になる場合です。
それでは、異なる階層のものがある場合はどうなるでしょうか。
異なる階層のものとあわせて3つ以上ある場合
一番小さい階層に「及び」を、それより大きい階層には「並びに」を使用します。
ここで初めて「並びに」が出てきました。
具体例を見ていきましょう。
第一条 この法律において、左の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一~十三 略
十四 地方団体の徴収金 地方税並びにその督促手数料、延滞金、過少申告
加算金、不申告加算金、重加算金及び滞納処分費をいう。
ここでは、
督促手数料、延滞金、過少申告加算金、不申告加算金、重加算金、滞納処分費
の6つ(本税以外の小集団)を「及び」で並列にし、
地方税(本税)と上記の本税以外の徴収金を「並びに」で並列にしているという構成になっていることがわかります。
図で示すと以下のような形です。
つまり地方団体の徴収金とは
①地方税
②「その(地方税の)」督促手数料
③「その(地方税の)」延滞金
④「その(地方税の)」過少申告加算金
⑤「その(地方税の)」不申告加算金
⑥「その(地方税の)」重加算金
⑦「その(地方税の)」滞納処分費
ということになります。
ここで重要なのは、「並びに」が出てきたら、その文中に必ず「及び」も出てくる。
ということです。
階層が3つ以上ある場合
さて、異なる階層のものとあわせて3つ以上のものを並列して言う場合、
一番小さい階層に「及び」を、それより大きい階層には「並びに」を使用します。
と言いましたが、階層自体が3つ以上になる場合もあります。
この場合、「並びに」は2回以上使うことになります。この「並びに」のうち、大きな接続を「大並び」(おおならび)、小さな接続を「小並び」(こならび)と呼びます。
具体例を見てみましょう。
第二百三十一条の三
4 第一項の歳入並びに第二項の手数料及び延滞金の還付並びにこれらの徴収金の徴収又は還付に関する書類の送達及び公示送達については、地方税の例による。
ここでは、まず
第2項の手数料と延滞金を「及び」で並列にし、”第1項の歳入”と”第2項の手数料及び延滞金”を「並びに」で並列にしています。
さらに、
これらの徴収金の徴収又は還付に関する書類の ”送達”と”公示送達”ついても「及び」で並列にしています。
(「又は」については、次の機会に書きます。)
それぞれだけなら、
「第一項の歳入並びに第二項の手数料及び延滞金の還付については地方税の例による。」
「これらの徴収金の徴収又は還付に関する書類の送達及び公示送達については、地方税の例による。」
とシンプルな構造になるわけですが、
これら二つを並列にしないといけませんので、それぞれをさらに「並びに」で並列にしているという構成になっていることがわかります。
図で示すと以下のような形です。
おわりに
今回は「及び」と「並びに」について書かせていただきました。
こうした「及び」と「並びに」のルールを把握しておかないと、法律や通知が正しく理解できないことになりますし、条例改正の時も困ってしまいます。
是非、新人公務員の皆様には知っておいていただきたいです。
と偉そうに書いていますが、「及び」「並びに」が大量に出てくると、ぶっちゃけ、どういう構成になっているのか、すぐにはわかりません!
国民健康保険条例だと
を除く。)の額(退職被保険者等に係る療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費、移送費、高額療養費及び高額介護合算療養費の支給に要する費用の額並びに県(都・道・府)が行う国民健康保険の一般被保険者に係る国民健康保険事業費納付金の納付に要する費用(県(都・道・府)の国民健康保険に関する特別会計において負担する後期高齢者支援金等及び病床転換支援金等並びに介護納付金の納付に要する費用に充てる部分に限る。)及び退職被保険者等に係る国民健康保険事業費納付金の納付に要する費用の額を除く。)
とか出てきますけど、パッと見て、
「ふんふん、これはこういう構成になっているな。」
なんていう風にはわかりません!
なので、すぐにわからなくても大丈夫です。
ゆっくり読み解いていきましょう。
それでは。
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