今回は、私が公務員になってから最も多く触れている公用文のひとつである、
「又は」と「若しくは」について書いていきたいと思います。
「及び」と「並びに」に並んで頻出ですので、こうした用語をきちんと理解することで、法令や通知の読み間違いがなくなりますので、是非この記事を読んでください。
「及び」と「並びに」については、以前の記事をご覧ください。
「又は」と「若しくは」の意味
さて、これらの用語の意味は、いずれも「~か~」つまり「or」(選択)です。
「及び」と「並びに」でも書きましたが、日常生活では「又は」でも「若しくは」でもどちらを使ってもいいんですが、公用文としての使う際は明確なルールがあります。
「又は」を優先して使う
それでは、具体的に「又は」と「若しくは」はどう使い分けるのでしょうか。
2つのものから選択する場合、まずは「又は」を優先して使用します。
(例)パン又はライス
みたいな感じです。
「パン若しくはライス」
のように、いきなり「若しくは」を使ってはいけません。
それでは、3つ以上のものから選択するときはどうでしょうか。
3つ以上のものから選択する場合
同じ階層のもの3つ以上から選択する場合
「、(読点)又は,(カンマ)」でくくり、一番最後に「又は」を使用します。
(例)アンパン、食パン又はカレーパン
という感じです。
「及び」と「並びに」のときと、同じルールなのでこれはわかりやすいと思います。
それでは、異なる階層のものとあわせて3つ以上ある場合はどうなるでしょうか。
異なる階層のものとあわせて3つ以上から選択する場合
一番大きい階層に「又は」を、それより小さい階層には「若しくは」を使用します。
なぜか、「及び」と「並びに」のときとルールを変えてきます。
並列の時に優先的に使用した「及び」は一番小さい階層で使用するのに対し、
選択の時に優先的に使用する「又は」は一番大きい階層で使用します。
具体例を見ていきましょう。
第一条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一~二 略
三 徴税吏員 道府県知事若しくはその委任を受けた道府県職員又は市町村長
若しくはその委任を受けた市町村職員をいう
ここでは、
”道府県知事”と”その委任を受けた道府県職員”を「若しくは」で選択的並列にし、
”市町村長”と”その委任を受けた市町村職員”も「若しくは」で選択的並列にしています。
そうして、上記の2つを「又は」で並列にしているという構成になっていることがわかります。
ちなみに「あれ?都知事や特別区は?」と思われるかもしれませんが、同法第1条第2項及び第3項で都や特別区への準用・読み替えをされています。
ここで重要なのは、「若しくは」が出てきたら、その文中に必ず「又は」も出てくる。
ということです。
階層が3つ以上ある場合
さて、異なる階層のものとあわせて3つ以上のものから選択する場合、
一番大きい階層に「又は」を、それより小さい階層には「若しくは」を使用します。
と言いましたが、階層自体が3つ以上になる場合もあります。
それでは、具体例を見てみましょう。
第二百三十四条の三 普通地方公共団体は、第二百十四条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。
ここでは、
「電気」「ガス」「水」の3つ(小集団)を「若しくは」で並列にし、
さらに、『「電気」「ガス」「水」の供給』と『電気通信役務の提供』を「若しくは」で並列にし、
最後に、【『「電気」「ガス」「水」の供給』と『電気通信役務の提供』を受ける契約】と【不動産を借りる契約】を「又は」で並列にしているという構成になっていることがわかります。
つまり翌年度以降にわたり締結することができる契約とは
①電気の供給を受ける契約
②ガスの供給を受ける契約
③水の供給を受ける契約
④電気通信役務の提供を受ける契約
⑤不動産を借りる契約
⑥その他政令で定める契約
ということになります。
おわりに
今回は「又は」と「若しくは」について書かせていただきました。
以前の「及び」と「並びに」、今回の「又は」と「若しくは」については必ず使います。
しかも法令や条文には大量出てきますので、 是非、新入職員の皆様には知っておいていただきたいです。
それでは。
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